――「うまく話す」より、「うまく聞く」が信頼を生む
■ なぜ「聞き方」が大事なのか?
会話がうまい人と聞いて、多くの人は“話が面白い人”や“言葉が巧みな人”を想像するかもしれません。
けれど実は、**「この人と話すと安心する」「つい本音を話してしまう」**と思われる人の多くが、“聞き方”の達人です。
なぜなら、どんなに話が上手でも、相手に「聞かれていない」と感じさせてしまえば、会話はそこで終わってしまうからです。
逆に、特別な言葉を使わなくても、“聞き方”ひとつで信頼や共感を生むことができる。
それが、会話の本当の「うまさ」なのです。
では、聞き上手な人は、どんな聞き方をしているのでしょうか?
■ 聞き上手がしている“5つの聞き方”の秘密
1. 「うなずき」と「相づち」に“感情”を込める
ただ「うんうん」「そうなんだ」と言うだけでは、機械的な印象を与えてしまいます。
大切なのは、相手の話に合わせて“うなずきの深さ”や“相づちの種類”を変えること。
たとえば:
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驚いた話には「えっ、本当に?」と目を見開いて
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嬉しそうな話には「わ〜!それいいね」と笑顔で
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落ち込んでいる時は「そっかあ…」とゆっくり語尾を落とす
表情・トーン・タイミングを工夫するだけで、
「ちゃんと聞いてもらえている」と相手が感じる信頼感はぐっと上がります。
2.「すぐに返さない」という余白の力
相手が話し終えるか終えないかのうちに、「それってさ〜」と返してしまっていませんか?
実は、すぐに反応するよりも、1秒の“間”を置くことで、相手は「ちゃんと聞いてくれてる」と感じやすくなります。
この“沈黙を怖れない”姿勢が、深い会話を引き出す鍵になります。
ポイントは:
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一瞬「ふんわり考えるような表情」を見せる
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「なるほどなあ…」とゆっくり受け止める言葉を挟む
会話が“キャッチボール”だとしたら、聞き上手はボールをきちんと「受け止めてから返す」人です。
3. 「話の背景」を探ろうとする
会話がうまい人は、相手が何を言ったかだけでなく、**「なぜそう思ったのか」**に関心を持っています。
たとえば、
相手が「仕事辞めようかな」と言った時――
うまく聞けない人:「えっ、やめたら生活どうするの?」
うまく聞ける人:「そっか、それって最近すごく疲れてたから?」
この違いは、表面的な言葉だけでなく、背景の“気持ち”を聞こうとしているかどうか。
その視点を持つだけで、相手は「この人には本音を話せる」と感じるのです。
4. 「共感」は“主語を変えて”伝える
共感を伝えるとき、「わたしもそれある!」と自分の話を始めるのは危険です。
それでは、会話の主導権がこちらに移ってしまいます。
代わりに、“主語を相手にしたまま”共感するのがコツ。
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「それ、○○さんにとってはすごく大事なことだったんだね」
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「うん、それ言われたらつらいよね」
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「そうやって頑張ってたの、ちゃんと伝わってきたよ」
共感とは、「あなたの気持ちを、私が受け取ったよ」と伝えること。
自分の話を挟む前に、**まず相手の感情を“そのまま返す”**ことが大切です。
5. 「聞き手は“鏡”」という意識を持つ
会話の中で、相手が饒舌になったり、逆に話しづらそうだったりするのは、
実は聞き手の“表情や姿勢”に影響されていることが多いのです。
鏡のように、あなたが:
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穏やかな表情でいる → 相手も安心して話す
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体を少し前のめりに → 興味を持たれてると感じる
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スマホを触らない → 話す価値を感じる
つまり、「どんな聞き方をするか」は、「相手がどんなふうに話すか」に直結するということ。
会話のうまさとは、相手をうまく話させる力なのです。
■ 聞くことに“正解”はない。でも“意識”で変わる
聞き方にマニュアルはありません。
相手も状況も違えば、正解も変わります。
でも、「どう聞くか」「どう受け取るか」という小さな意識の違いが、
人間関係や信頼感、距離感を大きく変えることは間違いありません。
聞くことは、誰でも今日から変えられる“スキル”です。
■ ちょっとした聞き方ワーク(やってみよう!)
1日5分だけでも、聞くスキルを磨く習慣を取り入れてみませんか?
◉ ワーク①:「相づちバリエーション」を増やす
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「へえ〜」「なるほど」「そっか」「うんうん」「マジで?」などを使い分けてみる
◉ ワーク②:「最後の言葉をオウム返し」
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相手「今日は疲れた〜」 → 自分「疲れたんだね」
◉ ワーク③:「感情の言葉」を足して返す
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相手「間に合わなかった…」→「悔しかったね、それ」
これを繰り返すだけで、相手の反応が変わってくるのを実感できるはずです。
■ おわりに:聞く力は、人を動かす“静かな力”
「話がうまくなりたい」と思う人は多いですが、
本当に人を惹きつけるのは、聞く力を持っている人です。
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安心して話せる
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否定されないとわかっている
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自分の気持ちを受け止めてもらえる
そんな聞き手がそばにいると、人は自然と心を開きます。
聞き方は、相手に敬意を払い、信頼をつくる最も静かで強いコミュニケーションです。
誰かの話に耳を傾けることで、あなた自身の人間関係も、人生もきっと変わっていきます。