なぜ、私たちはこんなにも「すれ違う」のか?
一生懸命説明したのに、上司から「で、結局何が言いたいの?」と冷たく返された経験はありませんか?
あるいは、部下に丁寧に指示を出したはずなのに、全く見当違いな資料が出てきて愕然としたことは?
「どうして分かってくれないんだろう」
「あの人とは性格が合わないのかな……」
人間関係の悩みにおいて、私たちはつい「性格」や「相性」のせいにしがちです。
しかし、断言します。
それは性格のせいではありません。
ましてや、あなたの伝え方が下手だからでもありません。
原因はたった一つ。
あなたと相手の 「立っている高さ(高度)」 が違うだけなのです。
私も、病院で患者として、医療スタッフと話をしていて、話が通じたのかと思った矢先にさっきまでの話をわかっていないかのような気になることもありました。
この例も、スタッフ側、そして患者側の立っている高さが違うとも言えますね。
今日は、人間関係の「ハードモード」を終わらせる、脳内OSのアップデート方法をお話しします。
「空」の住人と「地面」の住人
私の著書『思考のOS』では、物事の見方を「空(抽象)」と「地面(具体)」の2つに分けて解説しています。
職場を見渡してみると、2種類の人間がいることに気づくはずです。
1. 上司(空の住人)
彼らは、高度1000mの上空から全体を見下ろしています。
気にしているのは「今月の売上目標」や「プロジェクトの納期」といった、全体像(地図)です。
彼らにとって、地面にある細かい石ころは見えませんし、興味もありません。
2. 現場・部下(地面の住人)
一方、現場で働く私たちは、高度0mの地面に立っています。
目の前にある「今日中に返信しなければならないメール」や「気難しいクライアントの対応」といった、リアルな実体と格闘しています。
この2人が会話をすると、どうなるでしょうか?
・部下(地面): 「今日はお客さんが捕まらなくて大変で、電話を10件もかけて……(プロセスの苦労を聞いて!)」
・上司(空): 「(細かい話はいいから…)で、契約は取れたの?(結果だけ教えて)」
上司は空から「天気はどうだー?」と叫び、部下は地面から「石ころが痛いですー!」と叫ぶ。
距離が離れすぎているのに、お互いが自分の高さの言葉で喋り続ける。
これでは声が届くはずがありません。
これが「話が通じない」の正体です。
解決策:脳内の「2つの翻訳ボタン」を使い分けろ
では、どうすればいいのでしょうか?
相手を無理やり自分の高さに引きずり込むことはできません。
「なんでわかってくれないんだ」と嘆くのも、時間の無駄です。
安心してください。解決策はシンプルです。
あなた自身がエレベーターに乗り、相手のいる階(高さ)に合わせてドアを開けるのです。
そのために必要なのが、脳内OSに搭載されている「2つの翻訳ボタン」です。
ボタン1:So What?(つまり?)
相手が上司や、忙しい専門家(空の住人)なら、このボタンを押してください。
エレベーターを一気に上昇させ、具体的なエピソードや言い訳をすべてカットします。
そして、「結論」と「理由」だけを渡すのです。
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× そのまま: 「A社さんが日程が厳しいと言っていて、でもB案ならいけるかもと言っていて……」
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○ 翻訳後: 「要するに(So What?)、納期を1週間延ばす必要があります。理由はA社の都合です」
ボタン2:For Example(例えば?)
相手が新人や、経験の浅い人(地面の住人)なら、このボタンを押して急降下してください。
難しい概念を、相手が触れることのできる「実物」や「例え話」に変換して渡します。
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× そのまま: 「顧客満足度(CS)を最大化する接客をして」
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○ 翻訳後: 「例えば(For Example)、ディズニーランドのキャストになりきってみて。あの笑顔で挨拶しよう」
まとめ:あなたが「通訳」になれば、世界は変わる
会話が噛み合わないな、と思ったら、相手の顔を見てください。
相手が貧乏ゆすりをしていたり、時計を気にしていたら「話が具体的すぎる(長い)」サイン。
すぐに「So What?」ボタンを押しましょう。
逆に、相手がポカンとしていたら「話が抽象的すぎる(難しい)」サイン。「For Example」ボタンの出番です。
あなたが相手を変える必要はありません。 あなたがOSをアップデートし、優秀な「通訳」になってあげるだけでいいのです。
「話が通じない!」とイライラして消耗する「ハードモード」の人生は、もう終わりにしましょう。
翻訳ボタンをポチッと押す。
たったそれだけで、あなたの職場も、人間関係も、驚くほど快適な「イージーモード」に変わるはずです。

